人間の視線はどう動くのか?(gaze shift)

私たちが見ている世界は、目がとらえた情報を脳が組み立て直して作り上げたものです。
このページでは、視線のしくみをやさしく紹介します。

まずは、今回のデモで使った「舟橋駅のカモシカ看板」の元画像です。

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人間の目は、写真のように世界のすべてをくっきり見ているわけではありません。 まず、周辺視野(peripheral vision)で「何かありそうな場所」をざっくり感じ取ります。 この “何かありそう” を表すのが サリエンス(注視度) です。 明るさの変化や形の違いなど、目を引く場所がサリエンスとして高くなります。
サリエンスが高い場所を見つけると、目はそこへ視線をすばやく動かします。 この視線のジャンプを gaze shift(ゲイズシフト) と呼びます。 視線は1秒間に数回も動いていて、止まっているように見えても、実はとても忙しく働いています。
視線が向いた場所だけが、中央視野(central vision)として高い解像度で見えます。 さらにその中心には、もっと高精細な中心視野(foveal vision)があります。 この高解像度の範囲は、なんとたった1度くらいしかありません。 つまり、私たちが「くっきり見えている」と感じている世界は、 視線を次々と動かしながら、脳が少しずつ集めた情報をつなぎ合わせて作ったものなのです。
上の動画では、サリエンスに導かれて視線が移動する様子を再現しています。 白黒の世界の中で、視線が向いた場所だけがカラーになり、細かな情報が見えるようになります。 これは、脳が「必要な場所だけを高解像度で見る」というしくみを持っているためです。

CNNとの違い:人間は“全画面”を見ていない

上のカモシカ看板のような高解像度のカラー画像を、CNN(畳み込みニューラルネット)は 「画像全体を一度に処理する」しくみで扱います。

しかし人間の視覚はまったく違います。 周辺視野 → 中央視野 → 中心視野という入れ子構造になっており、 高解像度で見えるのは中心視野のごく狭い範囲だけです。

そのため、人間は「画面全体を一度に見る」のではなく、 気になる場所へ視線を移動しながら世界を理解するという方式で情報を集めています。 この違いが、AIと人間の視覚モデルの大きな差になります。